ショートフェイスベアArctodus simus
体長:2.7m肩高:1.7m新生代更新世(80万〜1万年前)

 更新世にはアメリカ大陸に大きなクマが現れた。現在のメガネグマに近縁なこのグループ Arctodus は顔が今のクマほどに突き出しておらず、Short-faced Bear または bulldog bear と呼ばれる。

 アルクトドスには何種類かあるが、アラスカからメキシコにかけての草原に棲んでいた最大種 Giant Short-faced BearArctodus simus)は史上最大のクマといわれ、そして更新世の北アメリカでは最大の肉食獣であり、後脚で直立すると高さ3.3mに達した。
 現在のクマ類に比べ脚が長くスリムでさえあるが、体重は600〜800kgと推定されている。
←手前は現在のグリズリー(ハイイログマ)

 クルテン(1971)は非常にどう猛であったろうと述べている。その(吻部の短い)頭骨の形状や大きな牙はライオンを想わせるほどで、長さの割に幅の広い顎(つまりは両方の犬歯の間隔が広い)と併せ、大型ネコ族のような強靱な力で獲物を噛み砕いただろう。
 アルクトドスは非常に長い脚で高速に走って獲物を追いかけることができ、ライオンのような顎で噛み殺す捕食者だったようだ。死肉食だったとの説もあるが、走るのに適した長い脚は活動的な捕食者だったことを示唆している。
 一方でクルテンは南米にいたアルクトドスはがっしりした幅の広い歯を持っていて、おそらく貝を食べていただろうと考えている。


 アルクトドスがいつ頃出現したのかははっきりしていないが、80万年前には既に北米一帯に拡がりつつあった。まず最小種の Arctodus brasiliensis が現れ、南米から北へと分布を拡げていったものと思われる。また北アメリカには2種がいて、合衆国東部からメキシコにかけての森林にすんでいた Arctodus pristinus は体も歯も小さめで、口がやや長く現在のクマと同様に雑食性だったようだ。  Giant Short-faced Bear は大型の有蹄類−バイソンやジャコウウシ、トナカイ、ウマ−や地上性ナマケモノを襲ったり、その死骸をあさったことだろう。
 アルクトドスは最後の氷河期、1万年ほど前に絶滅した。発見されている最も新しい骨は12000年ほど前のものだ。北アメリカだと東部ではアメリカクロクマ、西部ではハイイログマとの生存競争に敗れたのだとの説もある。

 南アメリカ西部に住むメガネグマ Tremarctos ornatus は現在のクマでは最も原始的な種であり、ショートフェイスベアに最も近い種類だ。メガネグマはかなり大きな雄で体長174cm、体重140kgである(E. P. Walker, 1968)。クマ類で最も草食性が強い種類だが、シカやグァナコ、家畜のウシを襲って殺したこともある。
 メガネグマに近縁でずっと大型の Tremarctos floridanus が更新世の合衆国南部とメキシコに棲んでいた。Florida Cave Bear と呼ばれるがヨーロッパのホラアナグマ(これはヒグマに近縁)とは異なり、メガネグマのなかまである。多くの化石が洞穴から見つかっているが、ヨーロッパのホラアナグマのように多数の個体の骨が固まって発見されてはいない。体重300kgもあったと推定されている。

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